足らないもの
何かモヤモヤして
悶々とした夜を過ごしていた
何が足らないのかと
真夜中を彷徨った
スリルでも恐怖でも埋められなくて
気付けば感動を求めていた
作り物の物語は
必ず最後にハッピーが訪れる
ありふれた毎日の中の孤独に
最後は気付いてもらえるんだ
愛とか承認欲求とか
そういうので満たされたいんだと分かった
やっと
足らないものが何かが分かった
分かったけど
足らないものは足らないままだ
そうやってまた
夜に溺れていくの
震わせたくなる胸
感受性がどれ程豊かなんだと自分に問いたい程に
私は感受性が豊かで
何にでも誰にでも感情移入してしまったりして
他の誰よりも悲しくて苦しくなる
他の誰よりも嬉しくて泣いてしまう
他の誰かの気持ちが分かってしまうから
だから自分のように思えてしまって
それがカタチとして独占欲とか嫉妬として現れる
だから分かってしまう
彼女は彼のことがとても好きなんだと
好きであることに気付かないふりして
社会と戦っていることも
素直になりたくてもなれないことも
平坦な現実からの逃避のような
だから胸を震わせて
彼からの愛を受け止めたい
私ならきっとそうしてしまう
そうやって少しだけ
恋をしたようになってしまっただけ
いつかまた、その時まで。
最後の瞬間が訪れる時
それを最後とは認識できていないわけで
時間が経って
あれが最後だったのかと
気付かされる。
私はたまたま
いつものようにカメラを向けて
2回シャッターをきった。
寝起きのまま
玄関から出て行く彼に
またね
とか
行ってらっしゃい
とか
声を掛けたんだろうか。
今になってみればそれが最後だったし
話したこととか温もりとか
そんなの全部覚えてないけど
私に向けた最後の笑顔だけが
ずっとずっと残ってる。
残酷だよなぁ
選択の連続
吐き捨てたその言葉は
他の誰でもなく
自分のことだったんだね
分かってたはずなのに
忘れてしまっていたね
脆くて叶うかわからないそんな希望を持ち続けるか
甘やかしてくれる優しいところへ転がり込むのか
今の私は何を選べばいいのか
誰に選んでもらえばいいのか
もう何もわからないや
欲しかったもの
ずっと欲しいと思ってた
欲しくて欲しくて堪らなかった
無理をしてでも
そばに置いておけば良かった
もう絶対に手に入らないと分かってから
どれほど大事だったか気付く
いつだって
無くさないと気付けない
あの時もそうだったのに
■
あの人の分まで
あの人のために
そんなの必要ないんだよね
私は私の人生を
等身大で生きればいいの
誰でもない私
知り合いと食事をした。
仕事から解放された私は
◯◯の誰々さんという肩書きがなかった。
ひとりの女性として接してもらえて
それは凄く心が休まった。
私に必要だったのは
身体を休めることよりも
心を休めることだったのかもね。
明日はカメラマンのお姉さんになってくるよ。
ほんの少し
誰でもない私になれて
ちょっと安心した。