クリスマスが終わる夜
もう10年ほどの時間が経つだろうか。
あの頃、12月25日は毎年渋谷にいた。
恋人とのデートでも
友達とのパーティーでもなくて
いつもひとりでライブを観に行っていた。
私はあの頃も今も、
毎年ひとりでクリスマスを迎えていた。
毎年、渋谷にある同じライブハウスに
好きな人に会いに行っていたんだった。
5階までの階段を
息を切らせながら上って
最後の最後、階段の終わりが見える頃に
好きな人のポスターが並べられていて
いつだってそれを見つけるのが好きだった。
いつからか習慣になっていた。
楽しい時間を過ごした後、
外の冷え切った空気の中を駅まで足早に歩く。
これもまた、習慣だった。
駅前のイルミネーションはどれも外されて
お正月飾りに替えられていく。
信号待ちをしているその間にも
煌びやかな電飾は光を失っていった。
まだクリスマスの夜なのに。
私にはサンタさんは来ていなかったのに。
いつだってクリスマスは私に冷たい。
余韻に浸る間もなく
残りの今年を
来年の装いの街で過ごしていく。